医療情報技師の記録

システム管理者として働く病院職員の記録です。

DTPソフトとWEB作成

 当院では、ホームページやパンフレット、ポスター、広報紙等の作成は基本的に外注はせず、システム担当者が行っています。そこで必要となるのがフォトショップイラストレーターなどのDTPソフトとWEB作成のスキルです。

 DTPソフトってすごく高いですよね。業務用でadobe creative suiteを2ライセンス買ってもらいましたが、とても個人では買えない金額です。ただ、効果的な広報ツールを作成するには必須だと思います。操作については、レイヤーやパスの概念が分かってくるとぐんぐん上達すると思います。

 WEB作成については、html、CSScgiFLASHの知識は持っていましたが、今はhtml5の時代。FLASHオワコンです。常に新しい技術を勉強していかなければついていけなくなってきました。私は大枠をDreamWeaverで作成してから、htmlのソースコードを調整していくやり方をとっています。

 しかし最終的に大事なのは「デザイン力」だと思います。デザインはセンスなので中々難しいですが、良いと思ったチラシは必要なくてももらってきますし、多くのサイトを見て参考にさせてもらってます。良いものを見て、眼を肥やすのがデザイン力を上げる近道だと思います。

ネットワークについて

 病院でもネットワークの構築は必要不可欠となってきております。そこで、病院のシステム担当者はネットワークの知識も必要となります。ネットワークSEレベルの知識やL3スイッチの設定までできる必要があるかは病院によると思いますが、最低でも基本的なTCP/IPの知識は必要となるでしょう。自宅のネットワークでは、DHCPになっていることが多く、IPアドレス等の設定はあまり気にしなくてもよかったと思いますが、企業では固定IPが多いため、システム担当者がTCP/IPの設定をしなければならない場面が必ず来ます。

 これから医療情報技師を目指す方は、IPアドレスサブネットマスクの関係性やデフォルトゲートウェイ等を理解することから始め、ワークグループやドメインDNS、WINS、MACアドレス無線LAN関係も押さえておきましょう。ping等のネットワーク関係のコマンドも覚えておくと便利です。

 

医療情報技師の業務~見積りの精査

 医療情報技師の業務の一つとして、システム導入時の見積もりの精査が挙げられると思います。病院によっては購買部門が行う場合もあると思いますが、できればシステム担当者が関わるべきだと思います。以前、私が知らない内に部門システムが導入されてしまったことがあるのですが、後々システム担当の目で確認すると非常に無駄でもったいない構成であったことがありました。メーカーを信用しないわけではありませんが、病院の規模や業務内容に合った構成を低コストで導入するのがベストです。その為には、我々システム担当者が提案段階から介入し、見積りを精査することが望ましいと考えます。

 オーバースペックになっていないか、必要のないオプションがついていないか、導入作業費の中でシステム管理部門で行える作業がないか、保守内容におけるランニングコストが妥当か、等を確認します。必要であれば値引き交渉もしますが、まずは無駄なコストを削減することを目的として行います。ただ、あまりにも神経質になりすぎて、必要なものまで削らないように注意しましょう。

稼働1ヵ月~現在(5ヵ月後)

 オーダリングシステムが稼働し、1ヵ月は我慢の月でした。まずは通常業務を回すことを優先し、止まってしまった場合は「今まで通り、紙でお願いします」との対応をするしかありませんでした。

 1ヵ月が経ち、メーカーの常駐がなくなりました。この時点で、初期対応は全てシステム管理者が行わなければなりません。現在まで、大きなハードウェア的トラブルがないのが幸いでした。ただ、想定外だったのがオーダーシールを発行するラベルプリンターです。カッターにシールの糊が付着し、切れ味が悪くなることが判明。対応として、月一回定期的に現場を回って清掃することとしました。

 日を増すことにより、スタッフが操作に慣れてきます。すると、「操作の問い合わせ」が「要望」に変わってきます。マスターやセットの追加、帳票の追加・修正、パラメータの変更で対応できるような要望なら問題ないのですが、一番困るのが「運用でしか解決しない要望」です。特に、部署間で話し合って決める必要がある運用を、システム管理者に決めてほしい、間に入ってほしい等の要望がバンバン入ってきます。「部署間で決めてほしい」と言うと必ず「システム的に解決できないか?」との返答になります。オーダリングシステムを導入したことで、部署間のコミュニケーション不足が露呈しました。これを解決するのはなかなか難しく、とりあえずこのような問題が出た場合は、システム運用委員会にて議題にし、そこで解決していく形をとりました。システム運用委員会はメーカー担当者同席の上、月一回定例で開催しております。

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 長くなりましたが、以上が当院でのオーダリングシステムの導入内容です。大変だとは覚悟しておりましたが、ここまでとは思っていませんでした。しかし、色々と勉強させていただき、経験値も上がった気がします。

 今後は、オーダリングシステムだけではなく、病院システム管理者としての業務をブログに書いていきたいと思います。

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 最後にこの場を借りまして、導入に関わっていただいた全てのメーカーさん、病院のスタッフに御礼を申し上げます。その中でも特に、システム管理部門スタッフに感謝しております。今は別部署の課長となりましたが、部署長の足りないところをフォローしてくれた元主任、弱音を吐くこともなく最後まで激務をこなしてくれた入職3年目のスタッフ、この二人がいなければ今回の導入は成功しなかったと思っておりますので、本当に心から感謝しております。ありがとうございました。

 

本稼働~1ヶ月

 いよいよ5月2日の外来本稼働です。メーカーから10名以上の導入支援メンバーが集合し、各部署に配置されました。我々システム担当も各部門に散らばり問題があれば即対応できる体制を取りましたが、システム関係・操作関係についてはほぼメーカーさんが対応してくれましたので、我々は患者様を少しでも回すための業務に徹しました。カルテ出しは勿論、患者様の呼び込みも行いました。

 スタート直後、前回処方Doについて問題が発生。4月の診療報酬改定により湿布等の外用薬の処方箋に1日の用量の記載が義務化され、そのまま前回Doを出すことができなくなっておりました。前回処方データで抜けているものもあり、それらに対応するため、私が稼働1ヵ月の間ほぼ外来に常駐し、処方についての対応業務を行いました。ちなみに前回処方や過去データ参照用に、旧医事会計システムも残してあります。

 過去のデータから稼働当日の外来数を予想しておりましが、想定よりも50名ほど多い来院数となりました。しかし、大きなクレームもなく、なんとかこなすことができ、初日としては及第点を取れたと思います。メーカーの話でも、稼働日初日でここまで混乱が少ないのはめずらしいとの事でした。

 そこから2週間はメーカーの支援部隊が居てくれたのですが、それ以降は導入メンバーの4人のみとなります。最終的に1ヵ月後からは我々だけで運用していかなければなりません。それまでにシステム管理者として覚えておかなければならないことは大量にあったのですが、現場を回すだけで精一杯でした。結局、システムの設定やパラメータ、マスターの管理方法を学ぶだけで1ヵ月が経ってしまいました。

 患者様からのクレームが少なかった反面、多かったのは職員からのクレームです。今までとやり方が全く変わるわけですから、うまくいかなくなるとちょっとしたことでシステム管理者にクレームが入ります。システムとは全く関係ない運用に関わることや、理不尽な内容でもシステム管理者にクレームが来ますし、パソコンが苦手な職員からも恨まれているかもしれません。しかし、これは仕方ないことだと思ってやっていくしかありません。正直結構つらいです。

稼働直前準備

 稼働直前はハードウェアの準備が主となります。外来診療終了後に各診察室へ設置していきます。システム担当が指示をしながらメーカーが設置し、動作確認を行います。ここで問題が2件発生。まず、外来診察室に設置したクライアントの1台が起動せずリカバリー作業が必要となりました。もう1件は、十分に準備したと思われた現場用のLANケーブルが足りなくなってしまい、急きょ自作し事なきを得ました。ちなみに、今回の導入でLANケーブルの自作スキルが大分上がりました。

 稼働開始は5月1日です。幸い日曜日ということで、外来は救急のみですが、0時に運用を切り替えますので、当直担当者と病棟夜勤看護師への対応も必要となります。メーカーのPMが泊まって対応してくれるとの言葉に甘えさせてもらいましたが、我々も気になって仕方ありませんでした。もうこの頃には食欲もなく、栄養ドリンクやビタミン剤等でつないでおりましたが、稼働日直前は稼働後の体力回復に努めたほうが良いと思います。

 もう一つ忘れてはならないのが、患者様への告知です。システムが導入され、運用が変わること。何のためにシステムを入れるのか。操作が不慣れなうちはご迷惑をおかけすることのお詫び。等を盛り込んだポスターを作製し、院内の至る所へ掲示しました。特に外来の待合には、大きく目立つように印刷しました。

 ここまでやれることは全てやりました。いよいよ稼働開始です。

外来全体リハーサル

 稼働日も迫ってきたところで、外来の全体リハーサルを行いました。各部門のミニリハーサルも行いますが、外来の流れ全体を通してのリハーサルになります。2回行った分の1回目ですが、まず外来の看護師長にシナリオを20個程考えてもらいました。各部門には担当者リストを提出してもらい、患者役も必要ですのでその協力要請も行います。前日に各部署へ必要端末を設置(終了後撤収)し、各担当者へシナリオを渡し、いよいよ開始です。

 ・・・これがひどいものでした。受付に時間がかかる、診察~オーダーに時間がかかるのはまだ想定内でしたが、問題は処置室。採血や注射の受け・実施が全くうまく回らず、患者様が検査やレントゲン部門に全く流れていきませんでした。結局2時間やって会計まで回ったのは2名のみ。最悪な結果となってしまいました。反省会を行いましたがかなり重い雰囲気で、ある部署はメーカーの責任にする始末。私の中でポッキリと心が折れる音がしました。

 しかし、そんな自分を当時の主任とスタッフが救ってくれました。2人はまだまだあきらめておらず、部署長として情けない姿を見せるわけにはいきませんでした。

 そこで、自分は大きな決断をしました。問題であった処置室の運用を変えることです。将来の電子カルテ運用を見越した形で、処置室の受けと実施をシステム上で行うとしていましたが、その為には看護師が都度システムへログイン・ログアウトをしなければなりません。しかし、その作業が回らない原因であると判断。その運用を捨て、今まで通りカルテへサインをする形に戻すことにしました。「まずは患者様を回すことを優先しよう。電子カルテに向けての運用はそのときに考えよう。」という考えに看護師長も賛同し、2回目のリハーサルはその運用で行いました。

 決してうまくいったとは言えませんが、1回目と比べて段違いの出来でした。そこから稼働日までミニリハーサルを重ねて、本番を迎えることとなります。