医療情報技師の記録

システム管理者として働く病院職員の記録です。

地域医療ネットワーク

 私の勤める病院がある2次医療圏では、地域医療ネットワークが存在します。(正確には2次医療圏だけではなく、県内のもっと広い範囲になりますが、、、)そこでは、同意を取った患者様の医療情報(情報提供病院の処方、検査、画像情報)を、地域のクリニックや調剤薬局老健施設で閲覧できるネットワークとなります。情報を提供する病院は、電子カルテ・オーダリングシステム、及びPACSを導入している地域の中核病院になります。

 当院でもオーダリングシステムの導入に合わせ、参加を表明しており、近々開始される予定となっております。前述の通り、参加にはオーダリングシステム・PACSが必要となり、その情報をID-LINK又はHUMAN BRIDGEへ送るためのSS-MIXサーバーも必要となります。当院ではID-LINKを選択しており、サーバー室にはSS-MIXサーバーとID-LINKサーバーも設置済みです。ちなみにSS-MIXとは、異なるベンダーのシステムの情報を共有するために厚労省が策定した規約のことで、ID-LINKはNEC、HUMAN BRIDGEは富士通の医療ネットワークです。

 SS-MIXで問題となるのは、各病院が独自で設定している処方の「用法」のコード付けになります。決まったコードの付け方があるのですが、それが複雑であり、担当している薬剤師は大分苦労しているようです。

 実際に地域医療ネットワークが開始されれば、通常その業務は地域医療連携室が担当するようになりますが、しばらくは我々システム管理者や企画課も関わることになりそうです。

 当法人では、クリニックや老健も運営しておりますので、このネットワークをうまく利用できれば、さらなる患者サービスに寄与できると思っております。ただし、あくまでも「同意を取った患者様かつ指定した医療機関」のみの情報共有となりますので、参加する患者様が増えるまでは時間がかかりそうです。隣のM県でも大分苦労しているようですね。

補助金・助成金について

 この仕事をしていると、補助金助成金を使ってシステムを導入する機会が結構あります。システム導入に関する内容であれば、申請等は我が部署で担当するのですが、意外と問題になるのは、ハードウェアの価格です。

 基本的な流れとして、
 1.システム見積もり要請
 2.助成金補助金申請
 3.申請許可
 4.システム購入
 5.納品書、請求書の送付
 6.助成金補助金入金
のような感じになりますが、1~3までにかなり時間がかかる場合があります。その場合、購入時に、1の見積もりに掲載されたハードウェア(特にパソコン本体)と同じものが手に入らない状況になります。そこで別なハードウェアに変更しなければならなくなるため、当然金額も変わってしまいます。しかし、申請した金額とはイコールでなければならないので、この辺はメーカーや販社と相談のうえ、ハードウェアに多少余裕をもって見積もりを作ってもらい、実際の購入時に金額が変わらないようにしてもらう必要があります。

 このあたりの処理をお願いしたり、さらなる補助金の情報を頂けたりしますので、やはりメーカーや販社、問屋等とは常に良い関係を作っておきたいと思います。

医療情報技師について

 職場のスタッフが、今年の医療情報技師能力検定試験に合格し、医療情報技師として認定されました。現在私が部署長を務めるシステム管理部門は、私とそのスタッフの2名で運用しております。これで医療情報技師が2名体制の部門となりました。

 私の勤める医療法人では、システム関係の資格には資格手当はありません。(基本情報技術者のような国家資格でも手当はありません)私が医療情報技師の資格を取りたかった理由はいくつかありますが、まずは「知識の向上」です。「情報処理」については基本情報技術者試験やシスアドを受けるときに勉強しておりましたので、やはり「医療情報」と「医学医療」の知識を向上させたいとの理由からでした。(ただし基本情報処理やシスアドを勉強したのは20年も前の話なので「情報処理」についても勉強はしました)「医学医療」については、病院に勤務していても中々看護や臨床に関わることは少なかったので、非常に苦労しました。

 もう一つの理由として、有資格者となることで、自分の行っている業務への自信と責任感を上げたいと思ったのが大きな理由です。資格取得後は、医療情報技師としての自覚が生まれ、それが次第に深まっていき、現在は強いプロ意識を持って仕事を行えております。

 今後も、スタッフ共々医療システムの専門職である「医療情報技師」として、現場が医療システムを安心して使えるよう、日々努力していきたいと思います。

【追記】

 病院機能評価の認定要件に、HIS導入病院には「医療情報技師の配置が望ましい」とも明記されており、病院にとっても必要な人員として認知されてきております。

計画停電におけるシステム停止(初)

 16日(日)に、設備点検による停電のため、院内全体のシステムの停止作業を行いました。オーダリングシステムを導入後、初めてのシステム停止の為、非常に神経を使いました。
 当院では、システム全体をカバーできるような自家発電機が無い為、システム停止時は紙運用となります。しかし、部門システムも全て停止する為、診療は限定した内容のみとなります。
 停電時間は最長で2時間の予定。
 まず、一番大事なのは「院内への周知・徹底」です。停電が計画された時点で通達することは勿論、連絡会や朝礼等でしつこい位に停電の周知を行いました。オーダリングシステムのポータルにある掲示板へも掲載しました。
 次に、各システムメーカーへの連絡です。さすがに日曜日ということで、立ち合いはありませんが、サポートへの連絡体制や、停止~起動のマニュアルや注意点を確認しておきます。電話関係の対応も必要となります。当院ではひかり電話を導入しておりますので、ONUとOGが止まらないよう、UPSのバッテリーを新品に交換しておきました。
 次に、システム停止時も患者ID検索や入院患者検索ができるよう、最新の状態のcsvデータを抽出しておき、バッテリーを満タンにしたノートパソコンへ保存しておきます。
 停電時のシステム対応は3名で行いました(各部門へも協力を要請してあります)各役割を決め計画表を作成、計画表通りに進めていきます。
 いよいよ開始です。停電予定時間の30分前から、館内放送を行い順番にシステムを停止していきます。停止作業に入る前に、再度部署を回りシャットダウンされているか確認します。基本的に、止めても良いと思われるサーバーからシャットダウンしていきます。オーダリングシステム関係は最後です。サーバーがシャットダウンされたら最後に各UPSを止めて完了です。

 停電中は基本的に何もできませんので、ラベルプリンター等の清掃やひかり電話UPSの残量の確認等を行いながら通電を待ちます。

 いよいよ通電です。まずはネットワーク機器から起動を確認します。サーバー室のL3及び基幹の各L2が起動していることを確認。

 次に、オーダリング関係のUPSの電源を入れる・・・あれ???10台あるサーバーの電源が同時に入ってしまいました。起動もUPSと連動してたのか!メーカーが言っていた話とちがう・・・結局、サーバーが全部起動したあと、再度シャットダウンを行ったため、大分時間がかかってしまいました。シャットダウン確認後、オーダリングシステムと医事会計システムのサーバーををメーカーが指定した順番に起動していきます。起動が終わったら各部門システムのサーバー、事務用のサーバーを起動します。

 システムが起動したら動作確認です。新患登録から受付、オーダーから部門連係、ラベルや処方箋等の出物が問題なく出るかを確認します。

 オーダリングシステム関係は問題なかったのですが、検体検査システムで問題発生。検体検査の管理PCとモダリティを接続する機器の電源が入らず、検査が手動でしかできない状態に。このままでは、翌日の診療に多大な影響が・・・検査メーカーに連絡しても休日の為か全然連絡が来ず、時間ばかりが経過。しかし、その接続する特殊な機器が、検査室内に2台あることがわかり、もう一台の機器のACアダプターを使ってみたら起動することが判明。そこで、同じアンペアとボルトのACアダプターを院内中探し回り、アンペアは多少小さいですが、同じボルトのACアダプターを発見。それを流用し事なきを得ました。

 作業中に地震速報の警告音が鳴ったりして、オーダリング稼働時と同じくらい胃が痛くなる対応となりました。

 設備点検による停電は、今後も定期的に発生しますので、今回の作業をマニュアル化し、極力問題が発生しないようにしていきたいと思います。

システム担当者懇親会

 昨日、同じ地域医療圏の病院のシステム担当者が集まり、懇親会を開催しました。ある病院のシステム担当者様が幹事を引き受けてくれまして、初めての開催となりました。当院からは、システム担当2名、企画1名、診療情報1名の計4名が参加しました。しかし、当院で開始直前に予想外の業務トラブルが・・・結局遅刻してしまいました。

 会は終始和やかで、普段は常に緊張感のある業務を行っている我々にとって、非常に心地よい時間を過ごせました。同じ職種の方々ですので、自分の病院内では分かってもらえない苦労話を共感して貰えますし、有用なアドバイスもいただけることもでき、もっと早くからやれば良かったと思いました。

 見方を変えればライバルになる病院同士ではありますが、今回のような横のつながりは非常に大事であると感じました。

 今後もこのような良いつながりを、大事にしていきたいと思います。

事務用サーバー構築

 当院では、事務用のサーバーを独自に構築しております。理由は簡単、「コスト削減」のためです。サーバー本体とバックアップ用のNAS以外は基本無料で構築しました。OS代はもちろん、CALもケチるためにLinuxにしました。OSレスのサーバーを購入し、CentOSをインストール、ファイルサーバーはSAMBA、データベースはPostgreSQLグループウェアは無料のgroup session(これオススメです)を構築。Raid5にすると高いので、ミラーリングにし、ファイルバックアップを差分で1ヶ月分NASにとる形をとりました。メールサーバーも立てましたが、グループウェアが優秀なので現在は使ってません。

 ファイルサーバーは個人的には、アクティブディレクトリよりもSAMBAの方が管理しやすいと思っております。各部門毎に共有フォルダを作成し、アクセス権限を設定しています。複数のユーザーが共有で使用している端末には、ネットワーク切断用のbatを用意し、使用後に実行してもらっています。

 簡単なデータベースシステムは、ACCESSVBで作成し、ランタイムで稼働させています。

 もしLinuxに興味がある方は、WindowsXP機で余っている端末か、Hyper-vに試しインストールしてみると良いと思います。ディストリビューションはたくさんありますが、色々試した結果、当院ではCentOSを採用しました。Vine Linuxあたりもオススメです。

システムアップデート

 オーダリングシステムを導入してから、はじめてのシステムアップデート作業を行いました。10月の診療報酬改定に合わせたアップデートです。日勤の外来診察終了後に予定し、実行しました。

 オーダリングシステムについては、2つあるwebサーバーを一台づつアップデートしますが、どちらかのサーバーへアクセスすればシステムは使用できるので、システムを止めることなくアップデート可能となっております。webサーバー1をアップデートすると、webサーバー1にアクセスしているユーザーには「作業を保存しwebサーバー2へ移動してください」との警告が上がります。webサーバー2の場合も同じです。一部病棟で作業中にサーバーが移動してしまい、データが不具合を起こしましたが、それ以外は問題なく終了しました。

 ただし、医事会計はシステムを止める必要があり、外来終了後も救急外来は受付しているため、事前準備が必要となります。まずは、患者検索用にシステムから患者データを抽出しておきます。続いて、新患用に数名分のIDを発行しておきます。今回は作業中に来院された方はおらず、こちらも問題なく終了できました。

 システムアップデートには「事前準備」「現場への周知」「作業中のフォロー体制」が重要であると再認識しました。

 

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【追記】

 上記ではほぼ問題なかったと書きましたが、後日ある問題が発生。クライアント数台にエラーが頻発!!エラーが出ている端末の条件が、全部病院側で準備した端末であり、Window7とIE11の組み合わせであることが判明。(メーカーが準備したのはWindows7とIE8)対応としては、エラーが出ている端末のIEのキャッシュをクリアすることで解消しました。次回のアップデート時にも同じ事象が発生する可能性があるので、今後の対応も決めていかなければなりません。